弁護士コラム

2017年04月

「事例で学ぶ金融商品取引被害の救済実務」を読んで

2017年4月30日  中島俊明  消費者問題, 読書・学習 

今年の2月に京都弁護士会で行われた消費者合宿に三木先生に来て頂きご講演を頂きました。三木先生のお話を聞く前に三木先生の著作を読んでおきたいと思い、この本を読み始めました。実際は消費者合宿までに読了とはいきませんでしたが。

私自身も金融商品取引被害を業務として取り扱い、京都先物・証券取引被害研究会に所属し、全国証券問題研究会にも何度も参加しているため、大変興味深く読ませていただきました。

本書は、金融商品取引被害救済のノウハウが記載されている総論部分と具体的な事件の処理を通じたノウハウが記載されている各論部分で構成されていいます。

総論部分では事件処理に必要な知識が平易な言葉で書かれています。特に印象深かったのは、説明義務における総合判断の重要姓です。これまで全国証券問題研究会では、説明義務における総合判断の重要性については何度も言及されていたのですが、この本を読むことで理解が深まりました。

各論部分では、特に印象的だったのは被害者の属性や性格をしっかりと裁判所に理解してもらっているところです。適合性原則は、投資家の特性に着目して不適当な勧誘を行ってはならないという原則で、
適合性原則違反は、金融商品取引被害では必ずといっていいほど主張される違法要素です。適合性原則違反にあたっては顧客の特性などを裁判所に理解してもらうことが重要になります。各論で紹介されている事件の中には被害者のことをよく見て、弁護士が理解し、それを余すところなく裁判所に伝えることができているという事件が多数あり、事件処理のレベルの高さを感じました。

全体的にわかりやすい言葉で書かれていて、名著だと思います。1度読んで満足するだけでなく、これから何度も読み重ねて、この本に書いてあることを自分のものにしていきたいと思います。

消費者・サラ金被害救済センター運営委員会の委員長就任にあたって

2017年4月8日  中島俊明  ご挨拶, 委員会活動, 消費者問題 

少し時間が経ってしまいましたが、平成29年度が始まりました。
京都の桜も綺麗に咲いています。

今年度は、京都弁護士会の消費者サラ金被害救済センター運営委員会
(以下、「消サラ委員会」と言います。)の委員長を務めさせて頂くことになりました。
消サラ委員会は消費者被害とクレジット・サラ金被害の防止と救済を目的とする委員会です。

京都弁護士会では、もう一つ消費者問題を取り扱う委員会として消費者保護委員会があります。
そちらの委員会でも昨年に引き続き副委員長と信用部会の部会長を務めることになっております。
今年の消費者保護委員会の委員長は木内総合法律事務所の加藤進一郎先生です。
加藤先生は私が京都に登録替えするときからとてもお世話になり、
また尊敬している先生で、消費者問題に情熱を持って取り組んでいる先生です。

また、今年の京都弁護士会の会長は長年様々な消費者問題に
熱心に取り組んでこられた木内哲朗先生です。

木内会長のもと、加藤先生が委員長を務める消費者保護委員会と消サラ委員会が
力を合わせて頑張っていくことで、これまでにない、
色んな活動ができるのではないかと感じています。

この1年間、消費者被害とクレジット・サラ金被害の防止と救済のために、
弁護士会が果たすべき役割を考えながら、消費者の皆様、弁護士会、
この問題に関わってくださる会員の皆様、消サラ委員会の委員のために、
自分の使命を一生懸命果たして参ります。

クロレラチラシ配布差止等請求事件を振り返って(その1)

2017年4月1日  中島俊明  未分類, 消費者問題 


(健康食品のイメージ写真)

私も参加したサンクロレラ販売販売株式会社(以下、「サンクロレラ販売」と言います。)に
対する広告差止訴訟の最高裁判決が平成29年1月24日がなされました。
私にとっても一つの大きな事件になったので、忘れないうちにしっかりと検討したいと思います。

~事案の概要~
クロレラ療法研究会(以下、「クロレラ研究会」という。)は、
健康食品「クロレラ」を紹介するに、糖尿病等の疾病が改善したとする
体験談の掲載されたチラシ(以下、「研究会チラシ」と言います。)を配布していました。
そして、研究会チラシを見てクロレラ研究会に資料請求をすると
研究会とは別の組織であるはずのサンクロレラ販売から商品の資料が届く仕組みになっていました。
このような仕組みを用いて健康食品を販売しているサンクロレラ販売に対して、
適格消費者団体であるNPO法人京都消費者契約ネットワーク(以下、「KCCN」と言います。)が、
クロレラ研究会がサンクロレラ販売の一部門であり,
単なる健康食品に医薬品のような薬効があるように研究会チラシに表示するのは、
①景表法の優良誤認表示に該当する、
②または消費者契約法上の不実告知に該当する、
ことを理由に研究会チラシの配布の差止等を求めました
(改正前景表法10条1号、消費者契約法12条1項及び2項)。

~京都地方裁判所平成27年1月21日判決(第1審判決)~
第1審での争点は、
①研究会チラシを配布しているのは誰か(「事業者」の要件)、
②研究会チラシが「サンクロレラ販売の商品」のチラシといえるのか(「商品についての表示」の要件)、

③仮にそうだったとしても優良誤認表示または不実告知が認められるのか(優良誤認の要件)、
の3点です。

争点①について
サンクロレラは配布主体はクロレラ研究会であって自らは配布をしていないと主張しましたが、
京都地方裁判所は「クロレラ研究会は被告の会社組織の一部に過ぎないから,

研究会チラシを作成し配布したのは被告自身である。」として
クロレラ研究会をサンクロレラ販売の一部門と位置づけ、配布主体をサンクロレラ販売と認定しました。

争点②について
サンクロレラ販売は、チラシには「クロレラ」や「ウコギ」ということは書いてあっても、
サンクロレラ販売の商品名が記載されているわけではないと反論していました。
これに対して、裁判所は、顧客が必然的に被告商品の購入を勧誘されるという仕組みが取られている
ということを重視して、商品名の記載がなくても研究会チラシを「商品についての表示」と判断しました。

争点③について
サンクロレラ販売は,クロレラやウコギの効能効果が存在しないことを科学的に立証するのでなければ,
研究会チラシによる説明が優良誤認表示にあたるとは認められないと反論していました。
この点、裁判所は「医薬品としての承認を受けていない細胞壁破砕クロレラ粒等の被告商品につき,
医薬品的な効能効果があると表示するものであり,一般の消費者に対し,
細胞壁破砕クロレラ粒等の被告商品があたかも国により厳格に審査され
承認を受けて製造販売されている医薬品であるとの誤認を引き起こすおそれがある。
また,上記のような表示は,商品の宣伝広告として社会一般に許容される
誇張の限度を大きく踏み越えるものである。」として、優良誤認表示にあたると判断しました。

3つの争点につき以上のような判断を行い、裁判所はKCCNの差止請求を認めました。

この判決は、最高裁判決のインパクトに隠れてしまいがちですが、
①形式上他の組織が配布した広告でも実質的な広告の主体者の表示として認定される場合があること、
②商品名の具体的な表示がなくても景表法上の商品の表示に該当する場合があること、
③薬効を謳う健康食品の優良誤認性の判断枠組を示したこと、
を示したという意味で重要な判決であると思います。

とても明快な判決であり、個人的に気に入っている判決です。

この後、控訴審判決、最高裁判決についても述べていきたいと思います。

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